■食事の意義と目的

食事は、体に必要な栄養素を補給し、生命と健康の維持と病気の回復、毎日の心身の体調を整えるためには必要不可欠なものです。
食事を通して美味しいものを食べ、味や匂いを感じ、目でも食事を楽しむことで、心の満足感を得ることができます。
さらに、皆で食事を楽しみ、団欒することで、人との社会交流もおこなうことができます。

■食事介助の目的

①一人では食事や食事の準備をおこなえない患者に必要な栄養と水分を補給する
②心の充足感をみたす
③食事の自立に向けて、機能維持の拡大をおこない、一人で食べる意欲を引き出す
④安全、安楽に食事ができる

■食事前の準備

①環境整備
・心地よい室温や採光、音に調整する
・食事をおこなうテーブルや周囲を片付ける
・大部屋の場合、処置中や排泄などがおこなわれている場合、カーテンを閉める
・介助者の手洗い②食事の準備
・患者の食事を確認し、オーバーテーブルにお膳を置く
・食事用具(スプーンやコップなど)の準備と配置(配置場所はいつも同じにする)
・エプロンや手ふき、ティッシュペーパーなどの準備③患者の準備
・排泄は済ませておく
・義歯(がある場合)の準備
・食事の時間であることを患者に伝え、意識を促す
・食事姿勢を整える
【ポイント】

・座位が可能な場合は、体をしっかりおこして安定した姿勢で座る
・座位ができない場合は、30度ギャッジアップする。頭が後屈、前屈しすぎないよう枕やタオル で調整する(やや顎を引いた状態がよい)
・少し前かがみの状態が望ましい
・足は床にしっかりつくように座り、腰は椅子に深く腰掛ける
・体とテーブルの間は握りこぶし一つ分の隙間をあける
・テーブルの高さは腕を乗せたときに、肘が90度に曲がる程度の高さにする
・椅子の高さは膝が90に曲がる程度の高さにする
麻痺がある場合は、麻痺側が倒れないようにクッションなどで支える

■食事介助の実際●食事が始まることや食事内容を伝え、意識を食事に集中させる

●麻痺がある場合は、麻痺の無い方から介助する

介助者と患者は同じ目線になるように座る

●一口目は、お茶で口や喉を潤してから食事を開始するとよい

●一口量はティースプーン1杯程度が目安

●スプーンを2/3程度、口の中に挿入し、下唇に乗せるようにする。患者が上唇を閉じたら、ス プーンをまっすぐ引き抜く

●意識低下がある患者には、一口ごとに声をかけ咀嚼と嚥下を促す

●ゴックンと飲み込み、食べ物がしっかり嚥下されてから次の一口を入れる

●患者のペースで食事を進める

疲労を考え、食事時間は45分以内にとどめる

●むせた場合は、一呼吸おいて口の中に残留していないかを確認してから再開する

●水分と食事はなるべく交互になるように介助する

●食後は逆流を防ぐため、30分~1時間はギャッジアップして上体を起こしておく

【食事を拒否する場合】

○リラックスを促すために場所や座る向きなどを変更し雰囲気を変えてみる
○明るい笑顔で声かけをおこないながら介助する
○周囲に気が散らないよう環境の整備をする
○食事内容の見直し(品数が多すぎないか、好み、柔らかさなど)
【食事意欲がない場合】

○焦らず、患者のペースで食事介助をする
○水分や汁物など食べやすいものから介助する
○好みの食べ物から介助する
○にぎって食べられるパンなど、一人で食べられる形態の食事を取り入れる
○環境の再検討する
患者に合った食事用具かどうか再検討する
【食事が口の中に残ったまま咀嚼、嚥下をしてくれない場合】
○固形物と水分や汁物を交互に介助する
○背中をさすり、咀嚼や嚥下を誘導する
○声かけをおこないながら咀嚼や嚥下を誘導する
○食事量、食事の柔らかさ、形態を見直す
○姿勢を整える