訪問看護師として、在宅療養で受け持つ患者さんは、比較的高齢の方が多くなります。また高齢でなくても、たとえばガンの末期で余命宣告を受けており、残された時間をできるだけ住み慣れた自宅で過ごしたい、という患者さんもおられます。そこで、訪問看護の中でターミナルケア(終末期看護)が含まれてくる可能性もあります。本人・ご家族が、自宅で最期まで過ごしたいと考えている場合、患者さんの看取りまで関係してきます。在宅での看取りを行なう訪問看護師としては、患者さんが最期までその人らしく、ご家族との日々を過ごせるようサポートするのが役目になります。

患者さん・ご家族が在宅でのターミナルケア・看取りを希望する場合、それが具体的にどんな医療やケアになるのか、本人、ご家族とよくコミュニケーションをとって理解してもらう必要があります。在宅のターミナルケアでは、基本的に心肺蘇生のような延命的な治療や、回復を目指した治療などは対象外になること、対応にある程度時間を要することもあり、容態の急変などにすぐに対応できないこともあるなど、本人とご家族に丁寧に説明して同意を得ておくことが大切です。その際、一旦在宅でのターミナルケアを開始した場合でも、治療方針の変更は可能であり、延命的な治療や積極的な治療を希望する場合は支援が受けられることも説明できます。在宅療養についての理解も以前よりは進み、「入院させないなんてかわいそう」という考えは少なくなっていることは確かですが、終末期、死が実際のこととして近づいてくると、本人や家族の思いも揺れ、変わることがあります。本人、家族の希望に変化がないか、周期的に確認するとよいでしょう。医療従事者としてこちらでこの先想定している具体的なケアと、本人やご家族が「こうやってくれるだろう」と想定しているケアに相違がないようにすることが大切です。

また、精神的にも時間の面でも、最大の看護者は家族です。そして、いよいよ死が近くなった場合患者さんにどんなことが起こり得るのか、その時にどう対処したらよいのかなど前もって知らせておくことによっても、ご家族の不安を軽減できるでしょう。