輸血と聞けば、自分以外の人から血液をもらうとイメージする人が多いのではないでしょうか?

ですが、整形外科の患者さんで、前もって手術の日程を組む人の場合には、あらかじめ自分の血液をとり、そして保存しておき、手術中に輸血が必要となった場合に、その血液を体に戻すといった方法があります。

あまり聞きなれない方も多いかと思いますので、今回は自己血輸血について詳しくお話ししていこうと思います。

自己血輸血をする意味は?

でも、他人から血がもらえる輸血があるのに、どうしてあらかじめ、わざわざ自分の血液をストックしておいて、その血液を輸血に使うのか?と疑問に思う方もいらっしゃるかと思います。

これには、きちんとした理由があるのです。

自己血輸血にはメリットがあります。

そのメリットとは、他人の血液を輸血するより自分の血液を輸血した方が感染症や副作用のリスクが少ないからです。

やはり、自分の血液を入れることでは、エイズや肝炎などの感染症を起こしてしまうリスクや拒絶反応などのリスクが軽減するからなのです。

自己血輸血が適応される場合?

自己血輸血は誰もが行えるというわけではありません。特に貯血法の自己血輸血の場合には条件をクリアーしなければ行うことができません。

自己血輸血のことを理解しそして協力してもらえる方です。やはり、採血するとなると、採血中とそのあとは安静にして頂かなければいけません。

また、自己血に対するメリットとデメリットの両方を納得して頂き、採血していても場合によっては、使用することができないことも了承して頂く必要があります。そして、全身状態が安定しており、採血しても問題ない方に行います。

自己血輸血の方法は?

自己血輸血といっても、3つの種類があります。

1つは、希釈法です。
これは、手術室に入室してまず1000ml程度の血液を採血し、そして、手術中に出血が多くなり、血液を必要とした際に、手術前に取っておいた血液を輸血する方法です。2つめは、回収法で手術中や手術後に出血した血液を集めて、フィルターもしくは遠心分離機を使用して再び体内に戻す方法です。

3つめは、貯血法ですが、手術の予定が決まっている患者に対して、手術前に2?3回採血し一度保存します。そして手術中に血液が必要となった場合に、この血液を用いて輸血を行います。

自己血輸血をすれば、メリットだけでデメリットはないように感じるかもしれませんが、自己血輸血にもデメリットはあります。

希釈法では、1回だけしか採血しないので、摂取できる量に限りがあります。また、手術前に行いますので、手術時間が遅れる可能性があります。

回収法では、一度体のそとに出た血液を用いるので細菌が入ってしまう可能性があります。最後に貯血法では、あらかじめ採血するわけですが、特別設備が必要ですので、設備が整っている病院でしか行うことができません。また、2~3回採血を行うので貧血になったりすることもありますし、貧血の場合はこの方法を用いることができません。

どのような疾患だと自己血輸血をするの?

整形外科の場合の手術といえば、骨折した際に手術をすることが多いので、病気や怪我が起こったらすぐに手術をするイメージが強いと思います。

骨折をあらかじめ予測することは無理ですし、かといって骨折しているのにしばらくそのまま置いておくなんて過酷ですよね。骨折などの場合には、この自己血輸血はおこないません。

整形外科の疾患で自己血輸血を行うことの多い疾患は、変形性膝関節症です。変形性膝関節症は、膝の関節が変形し、疼痛や立位困難といった症状が出てきます。

この変形性膝関節症は、手術中に出血リスクがたかいため、輸血をしなければいけない可能性が高いです。

また、あらかじめ手術の予定を立てますので、自己血輸血するのに適しているのです。

自己血輸血の看護

自己血輸血の看護についてですが、この自己血輸血は看護師の誰もが行えるというわけではありません。

自己血輸血看護師という看護師がおり、自己血輸血を安全にそして適正に行うことを推進している看護師のことをいいます。

自己血輸血看護師になるためには、日本自己血輸血学会が定める認定を得なければいけません。あらかじめ、自己血を採血する場合には、観察をしっかり行っておく必要があります。

採血を行い際には、細菌汚染に注意し、そして迷走神経反射を起こさないようにも注意する必要があります。

まとめ

自己血輸血について少しは理解して頂けたでしょうか?

自己血輸血を行うのは、誰もが行えばいいというものではなく、メリット・デメリットの両方があります。ですので、自己血輸血を行う患者には、自己血輸血を理解して頂いた上で行わなければいけません。

また、自己血輸血だからといって、トラブルが全くないというわけではありません。自己血輸血でも細菌感染を起こしてしまうことや、貧血になってしまうなどのリスクはあるのです。

ですので、十分に患者自身に理解して頂き、自己血輸血を行う際にも、観察をしっかり行わなければいけません。

自己血輸血