帝王切開 看護目的

母児の安全の確保と、緊急帝王切開を受けた妊婦への心のケアを行う

緊急帝王切開とは

緊急帝王切開とは、ただちに児を娩出しなければいけない理由が発生し、緊急に帝王切開をおこなうこと

緊急帝王切開になるケース

1.胎児機能不全:児の心音低下が著しく、経膣分娩での経過を待てないときにおこないます。

2.常位胎盤早期剥離:一刻も早く胎児の娩出を急がなくては母児ともに危険となるケースで、緊急帝王切開になることが多いです。

3.妊娠高血圧症候群:血圧の上昇が著しく、陣痛の痛みや経膣分娩の経過でさらに血圧の上昇が予想されるときにおこないます。

4.微弱陣痛、遷延分娩:陣痛が微弱、分娩の遷延などで母親の疲労が強く分娩停止となった場合におこないます。

5.回旋異常:児の回旋が悪く分娩の進行がない場合におこないます。

緊急帝王切開のリスク

胎児への影響

そもそも緊急帝王切開になること自体、児になんらかの負荷や危険が伴っているケースが多いので、出生後に呼吸障害や感染をおこすリスクが高いです。

また、産道を通らずお腹から出てくるので、肺の水を押し出すことができず、出生後に呼吸障害をおこすことがあります。

母親への影響

妊娠高血圧症候群や常位胎盤早期剥離の場合は、産後も高血圧や出血のリスクがあり注意が必要です。

また、微弱陣痛や回旋異常、遷延分娩の場合は、帝王切開の前に陣痛が長く続いていたケースが多く、疲労している場合が多いです。

疲労による産後の弛緩出血のリスクもあります。どのケースも腹部を切開しているため、収縮不良による出血に注意する必要があります。

そして、緊急という特殊性により気持ちが追いつかず、帝王切開に否定的感情を持つ妊婦が多く、十分なフォローが必要です。

帝王切開 看護

緊急帝王切開時の看護

アセスメントの視点

1.緊急帝王切開になる理由と状況

2.児心音

3.妊婦の基礎情報(年齢、初産か経産婦か、身長、体重、血液型、貧血の有無、薬のアレルギー、妊娠経過、分娩経過、手術歴)

4.児の基礎情報(妊娠経過、分娩経過、妊娠週数、推定体重)

5.妊婦の理解、受け入れ

6.家族の理解、受け入れ

緊急帝王切開時の看護の実際

1.緊急帝王切開の決定

緊急帝王切開が決定したら、どんなに緊急でも妊婦、家族への説明と同意が必要です。医師から説明がおこなわれますが、どんなに理解を示す妊婦、家族においてもフォローは必ずおこないます。

再度、不明点はないか、疑問点はないかなどを確認します。

また、妊婦が1人の場合には至急家族と連絡を取り、家族の来院を促します。家族の到着を待てない場合は、電話で家族に説明をする場合もあります。

2.帝王切開の準備

更衣、点滴確保、剃毛、術後準備など妊婦側の準備と手術室の準備、ベビーの受け入れ準備もを並行しておこないます。

この間も必ず児心音の確認は続けます。ベビーの状態が悪くなると予想される場合は、小児科と連携を取っておきます。

3.オペ室への入室と準備

いったん家族と離れるので、妊婦が一番不安になるときです。

担当助産師はかならず付き添うようにします。妊婦の緊張はピークに達するので、言葉かけや雰囲気作りをおこなって緊張が取れるよう配慮します。

オペ室では、血圧計や点滴、尿カテーテルや酸素の装着、ベビー受けの準備をおこないます。

4.手術開始

手術中はできれば妊婦のそばにいて手を握ってあげると安心です。

常に言葉をかけ手術の進行を伝えます。赤ちゃんがもうすぐ生まれる喜びを感じられるようにします。

立会いが可能な場合は、医師のOKが出たら家族を呼びます。

5.児の娩出

ベビー受けの担当がすぐベビーを医師より受け取り、呼吸の確認、全身状態の確認をおこないます。

妊婦、家族へ労いの言葉をかけます。

ベビーの状態が落ちつけば妊婦の元に連れて行き対面となります。

可能なら家族で写真を取り、十分に出産の喜びを味わえるようにします。

6.胎盤娩出、閉腹

ベビーが娩出し、ベビーと家族がオペ室を出たあとは、本人の希望や医師の判断でウトウトできるよう麻酔を追加する場合があります。

引き続き妊婦の全身状態と出血の程度をみます。

7.手術終了、帰室

帰室後2時間は出血が増えるリスクがあります。

小まめに観察をおこない出血の程度、子宮収縮の程度を確認します。

同時に心のケアも始めます。妊婦の状況を見ながら不安な気持ちはないか、辛くないか、痛みがないかなどを確認し、妊婦の気持ちに寄り添えるようにします。

なるべくベビーは同室しますが、赤ちゃんのお世話はまだ医療者がおこないます。(もしくは家族へ指導をします)

8.手術後

緊急帝王切開になった場合、陣痛時の辛い体験や命の危険を感じるような恐怖感、疲労、状況に抵抗できない無力感、環境の急な変化、想像とは違う分娩体験などが後にトラウマになることが多いです。

そのような場合は、できるだけ辛い気持ちを言葉に表すこと、同じ体験者と気持ちを共有することが大切とされています。

医療者は、なるべく早く妊婦が気持ちを表出できる環境を作ることが大切です。

時期をみて同じ帝王切開を経験した妊婦同士、気持ちを共有できる場を提供することも有効でしょう。

手術後に何度か訪室し、分娩の振り返りをおこなうことがもっとも重要です。

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