筋肉注射とは
筋肉注射の目的
医師の指示の元、筋肉内に薬液を注入して、薬剤を体内に吸収させるためにおこないます。
(筋肉注射後約3分で、70~80%の薬剤が吸収されます。静脈注射よりは発現は遅く、皮下注射より早く吸収されます。)
筋肉注射の方法
1)カルテの確認をする
患者のカルテを確認し、医師が何の目的で、どの薬剤を、どれくらいの量投与すると指示を出しているかを確認します。
投与方法はルチーン以外の方法で投与される以外は、記載されていないことが多いので、薬剤に合った投与方法を必ず確認します。
2)物品の準備をおこなう
1.注射器(21Gか23G、2.5ml~5ml:必要薬剤量の合わせる)
2.薬剤
3.アルコール綿
4.テープ
用意が完了したら、他の看護者とカルテ氏名、薬剤名、投与方法に間違いがないかをダブルチェックします。
3)筋肉注射の方法
1.患者の呼び出しと確認
患者を呼び出し、フルネームで氏名を答えてもらい、カルテの氏名、指示に間違いないかを確認する。
2.患者に処置について説明する
何のために、どのような薬剤を、どのような方法で投与するのかを説明します。
筋肉注射は痛みを伴うことが多いので、注射部位の希望も聞いておく。
臀部を希望する場合は、他の人が出入りしない部屋への移動を考慮する。
同意書がいるものには医師と本人のサインを確認する。
3.注射器に薬剤を吸って準備
注射器の中に空気が残らないように、薬剤を吸ってから一度、内筒を押し出し、先端まで薬剤が充填するようにします。
4.注射部位の確認をおこなう
筋肉注射の場所は、筋層が厚く、大血管や神経が少ない三角筋部、殿部上方外側中臀筋部、大腿四頭筋外側広筋部(あまり行なわれません)のいずれかでおこないます。
<三角筋部>
肩峰から三横指下のやや前面
<殿部上方外側中臀筋部>
腸骨稜と臀溝を目安に臀部を上下2等分、殿裂と臀部の外側を目安に臀部を左右に2等分し、その2つの腺を合わせて臀部を4等分します。
4等分した中心点から外側に45度の角度で腺を引き、その腺を三等分した外側1/3の場所
<大腿四頭筋外側広筋部>
大腿外側の大転子部と膝蓋骨の中央を結んだ線の中央部分
5.消毒をおこなう
アルコールでアレルギーやかぶれを起こした経験がないかを確認し、無ければ、注射予定部位の中心から外側に向かって円を描くように消毒し乾かします。
アルコールでアレルギーやかぶれがある患者には、代替(ザルコニン液など)で消毒をおこない、同じように乾かします。
6.筋肉注射の実施
注射部位を軽くつまみ、針を45~90度の角度で穿刺します。
(殿部上方外側中臀筋部の場合は90度で穿刺)穿刺したら患者にしびれがないかを確認し、神経損傷の有無を確認する。問題なければ、一度注射器の内筒を少し引いて、血液の流入を確認し、血管への刺入がないかも確認する。異常なければ薬剤を注入します。
何度も刺入している場所は硬くなっている場合があるので、他の部位でおこないます。
7.注射器を抜いてマッサージをする(マッサージをしないものもあります)
薬剤を注入し終わったら、アルコール綿で抑えながら注射器を抜き、マッサージをします。マッサージが終了したらテープを張る。
筋肉注射のリスクと注意点
1) 薬液間違いや患者間違い
必ず患者氏名、薬剤名、薬剤方法のダブルチェックをおこない、患者氏名は患者自身に言ってもらい確認します。
2)空気塞栓、神経損傷
薬剤を注射器に入れるときは、確実に空気を抜きます。
神経に触れていないかしびれを確認し、しびれがある場合はただちに注射針を抜き、医師に報告する。
3)手技の間違い(投与方法や注射部位など)
薬剤によって投与方法や注射部位が決まっているので、必ず確認します。
また、注射後は揉まなければけないもの、揉まなくてよいものがあるので注意します。
4)針刺し事故
リキャップはせず、すぐに廃棄ボックスへ捨てる。
針刺し事故が起きてしまった場合は、ただちに流水で流し、上司、医師に報告する。
5)筋肉注射は痛みが強く出る場合がある
注射部位や注射回数、薬剤によっては痛みを強く感じることがあるので、手早く確実におこなうことが大切です。
治療などで何度も筋肉注射を行なっている患者は、注射部位が硬くなっていることがあるので、適宜、注射部位を変更するようにします。