産婦人科にも面白く楽しい患者さんは、たくさんいらっしゃいます。
妊娠や出産という出来事は、特に初産婦さんの場合、家族総出の一大事になることが多く、思いが強すぎていろいろハプニングも起きやすいのです。
産婦人科 | そんな中、忘れられない患者さんがいるので、ご紹介します。
その方は、高齢初産婦さんで、相談したいことがあるとのことで、助産師外来に来られました。
会うなり、悩んでいることがあるんですと。
どうされましたか?
と聞くと、義母と夫との関係について悩んでいるというのです。
産婦人科では、家族関係は問題になることが多く、嫁姑問題や夫の育児参加などで悩まれる方も多いです。
その方とご主人は、再婚同士でお見合い結婚をされたとのことでした。
結婚前にお互いの条件を出し合い結婚に進んだとのことで、条件の一つに親との同居はしないと約束をしたようです。
ところが、結婚最初は夫婦2人で住んでいたようですが、義母が勝手に同居する家を用意し、今は同居を迫られて困っているとのことでした。
それに対し、夫の回答が曖昧で情けない。
マザコンだし、頼りにもならない。子どもが生まれてきたら、頼りない夫と義母と同居するなんて、考えただけでもストレスです!
とかなり憤慨されていました。
子どもが生まれても義母には触らせたくない!とかなりご立腹でした。
こういった悩みの場合、個人的な問題なので、あまり具体的なアドバイスはできないのが現状です。
こうした方がいいなどと安易には言えないのです。
そのため、たいていは怒りを沈め、とにかく客観的に問題解決していけるように、まずは話しを聞くことから始めます。
1時間たっぷり話しを聞くと、少し落ち着いたようで、すっきりしたとおっしゃられました。
また、話しをしにきてもいいかと聞かれたので、もちろんと答えました。
その後も彼女は、2回助産師外来に来られ、生い立ちから、夫婦関係、嫁姑問題のことなど、たくさん話しをしてくれました。
解決の糸口は、なかなか見つかりませんでしたが、家や家族の問題が、彼女の妊娠期間に大きなストレスを与えているのは、事実でした。
少しでも思いが発散できたらと思い、色んな家族のかたちをお話ししたり、話をひたすら聞いたり、マッサージをしたりと色々コミュニケーションを図りました。
その後、彼女が無事にご出産されたとのことで、入院中の彼女の病室を訪れました。
すると、病室では思いのほか、彼女と赤ちゃん、ご主人と義母とで楽しそうに談笑されていました。
不思議に思い、彼女が一人になったときを見計らって話しを聞いて見ました。
すると、実は解決したんですと彼女。
どういうことか聞くと、陣痛が始まり長く辛い出産の間、ご主人が今までになく頼りになり、頼もしかったというのです。
まるで、恋をしている少女のような顔で嬉しそうに話しをしてくれます。
彼女はこうも続けました。
出産も子育ても一人ではできないって思いました。
私は今まで、全部一人でやろうって思ってきたけど、義母にも赤ちゃんを触らせたくないと思ってきたけど、今は違います。
みんなで赤ちゃんを育てていきたいと心から思います。
同居して、たくさん甘えてやろうと思ってるんです!
と素敵な笑顔を見せてくれました。
私は、改めて出産は、家族の新しい形を作る一歩になるんだなと思いました。
出産がいかに女性にとって、良い経験になるかが、家族の新しい出発の原動力になるかと思うと助産師の役割は大きいと感じます。
彼女は、出産後も私を訪ねて、よく助産師外来に来てくれます。
でも、今までと違うところがあり、いつも赤ちゃんとご主人が一緒なのです。
彼女が育児の悩みを話しいる後ろで、ご主人はいつも優しく見守ってくれていました。
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