さすがに、看護師学校を卒業したての若い人であっても、いつまでも若者ことばのままでは、社会では通用しません。入職先には、目上の人がほとんどなので、正しい敬語を用いるだけでなく、病院という場所柄をわきまえた表現をすることが大切です。それによって、スタッフや患者ともスムーズなコミュニケーションがとれるようになります。
患者と話すときには、堅苦しい敬語を使うより、親しみを込めて明るい笑顔で接することが基本です。親しみを込めることと馴れ馴れしくすることはまったく別なので、注意が必要です。中には耳の遠い高齢者もいます。聞き取りやすいように口を開けて話すこと、早口にならないこと、語尾ははっきりと発音することがポイントです。看護師は大切な情報を患者やスタッフに伝えることがしばしばあるので、口を明けずに早口で話すと、肝心なことが伝わりにくくなります。
スタッフと患者に対する言葉の使い分けも大切です。専門用語を羅列してわかるのはスタッフだけです。患者にはやさしい表現に言い換えて、理解してもらうようにします。また、私生活と職場の言葉の使い分けも大切です。流行語や仲間内で使っているような隠語の使用は絶対に避けるべきです。使い慣れていない人にとっては耳障りに感じられるだけです。また、起承転結を考えた話し方も重要です。検査の説明など自分がわかっていることは、端折って説明をする傾向にあります。相手の立場に立った言葉づかいができるよう配慮も必要です。
学校で習うことですが、敬語には丁寧語、謙譲語、尊敬語があります。丁寧語はオールラウンドプレイヤーで多くの場面で活躍する表現方法です。表現方法が柔らかいので、どのような場面でも利用できます。目上の人に対しては尊敬語を用い、謙譲語は、自分が相手よりへりくだって表現する方法です。たとえば、自分の上司のことを外部の人に話す場合には、相手よりも上司の立場を低く見て表現をします。言葉遣いは一朝一夕で覚えられるものではありません。常に相手の立場を慮って話すクセをつければ、自然とその場にマッチした正しい言葉づかいができるようなります。