看護師は自主的な治療行為をすることはしません。患者が快適に療養生活を送れるように手助けをすること、医師の指示を受けて治療や診療にサポートをするのが主な仕事です。医師の指示なしに医療行為をすると職域を超えてしまうので、法律違反となります。しかし、忙しい医療現場では医師の指示待ちをしていると、患者に負担をかけたり、治療が遅れてしまう可能性があります。また、医師が不在の時や外出時に遭遇した緊急時において、要救護者に遭遇した場合、緊急措置ができないという事態も想定されます。このような事態を回避するために、いくつかの治療行為に対して、特定行為と認定し研修を受けた看護師ならば、医師の指示がなくてもケアができるという法律が整備されつつあります。

特定医療研修制度を実施する目的には、医師よりも看護師のほうが患者に接しているため、細かい状態の把握ができやすく、必要な処置をベストのタイミングで実施できるスキルを持つことが重要である、ことにあります。特に、在宅療養をする患者が増加傾向にあることから、特定医療の研修制度を確立することは急務と考えられています。研修が行われる内容は多岐に渡っていて、たとえば、気管チューブを挿入している患者のチューブの位置調整、人工呼吸管理を受けている患者への鎮静薬量の投与の調整、胃ろう・腸ろうカテーテルの交換、栄養カテーテルの管理、インスリン投与量の調整、持続点滴による降圧剤の投与を受けている場合の投与量の調整など38の行為があります。

研修は、新人より病棟勤務で経験を重ねた看護師が対象とされます。日々の業務においても様々な研修がある中、さらに専門的な研修を受けることになるので多忙を極めますが、看護師としての業務の幅がひろがり、キャリアアップにつながります。ただ、特定医療研修を受けたとしても、どのような場面でも看護師の判断によって研修で習得した技術を実施できるというものではありません。病院などの医療機関内ではやはり医師の指示が最優先されます。研修を行けた知識を生かせる場は主に在宅医療の現場と言えます。