看護師になったら、担当する診療科目によっては、患者の最期に立ち会うことは避けて通ることはできません。看護師として無力さを感じる瞬間だという人もいますし、感傷的にならないように職務を全うすることだけを考えているという人もいます。最期を確認して告げるのは医師の仕事ですが、その後のケアは看護師の大切な仕事です。エンゼルケアと呼ばれていて、最期を迎えた患者に処置を行います。装着していた医療機器類を取り除き、目や口を閉じます。入れ歯があれば装着をし、全身清拭や洗髪、着替え、場合によっては髭剃りをしてエンゼルメイクを施します。生前に近い顔色に戻すのが目的で、ファンデーションやチークなどを施して穏やかなお顔にします。約2時間後には死後硬直が始まってしまうので、その前にすべてを終わらせなければなりません。病室ですべてのケアが済んでから、霊安室に安置します。

とは言うものの、遺族の心情を考えると、事務的に処置を進めることはできません。お別れの時間をとったり、場合によっては遺族とともにエンゼルケアを行うことで、亡くなった方の尊厳を守り、遺族が最後までケアをしてあげられたと納得できる心のケアとしての役割を果たせます。また、感染症を防ぐためにも必要な処置なので、病院で亡くなった場合には、必ず実施します。一般には看護師が担当しますが、医療保険適用外の業務と位置付けられているので、有料の場合もありますし、費用を請求しない病院もあります。

日本ではエンゼルケアと呼んでいますが、海外ではエンバーミングと言います。エンバーミングは死に化粧のことではなく、防腐処理のことで、土葬には欠かせない処理です。この処置を行うには、エンバーマーの資格を持っていることが必要です。日本では、看護師が特別にエンゼルケアの教育を受けているケースはあまりないのが現状です。そのため、先輩看護師に指導を受けたり、自主的に研究して技術を学んだりしている人も多いです。