各医療機関では配置する看護師の人数の割合(看護基準)が決められています。例えば「7:1」となっていれば、患者7名に対して看護職員(看護師、准看護師、看護補助者)が1名必要ということを表しています。この割合は医療機関の種類によっても違っており、看護職員が多く必要である急性期の病院や緩和ケアでは7:1、一般病床の場合は7:1~15:1、長期の療養が必要な患者が利用する療養病棟では病状が比較的安定しているので、患者に対する看護師の数も少なくて20:1~25:1になっており、各医療機関の状況に合わせて十分な看護師を配置するように定められているのです。また正看護師の割合も定められていて、看護基準が7:1~13:1の一般病棟であれば正看護師の割合(正看護師比率)は全体のスタッフの数の70%と定められています。これが療養病棟の場合は20%以上であれば良いとされており、基準がゆるくなっています。看護基準をクリアしている病院であれば、手厚い看護を受けることができますから、入院費が高くなる傾向があります。
具体的にみてみると看護基準が7:1で、正看護師の割合が70%を超えるように病院側が雇用していれば、一般病棟の場合1日あたりの入院基本料を15,910円(2014年診療報酬基準)請求できます。しかし同じ一般病棟で看護基準が15:1で、正看護師の割合が40%以上の場合は1日あたりの入院基本料は9,600円となってしまうのです。正常な病院経営のためには看護基準をいかに7:1にして、正看護師の割合を70%以上にするかが鍵となってくるわけです。
より多くの看護師を確保するために資金に余裕がある大学病院や大手の総合病院では看護師に高収入を掲示して転職先に自分たちの病院を選ぶように促しています。そのせいで地方の中小の病院では看護師を確保できず、入院料も高く請求できず経営が苦しくなるところも少なくありません。看護師の側から見れば転職先の選択肢が増えましたし、今までは夜勤をしなければ正社員となれなかった所でも日勤のみでも正社員になるチャンスが広がってきています。看護基準は看護師の転職活動には大きなメリットがあるようです。