母子分離の看護の目的
母子分離によるさまざまな弊害をなるべく早く解消できるようにケアすることにあります。
母子分離とは
さまざまな理由から、赤ちゃんと母親が離れなければいけない状況になることです。
母子分離がおこるケース
1.児が早産、低体重、呼吸障害、感染などの理由で胎外生活が順調におこなえず保育器に入っている場合
2.児もしくは母親がなんらかの理由で搬送になった場合
3.産後、母親の体調不良(高血圧、貧血、疲労など)により児のお世話が制限されている場合
4.母児異室の病院の場合
5.児が光線治療中の場合
母子分離のリスク
1.母児の愛着形成の遅れ
2.母親の心理的不安、寂しさ
3.母親の分娩への否定感、トラウマ
4.母親の母乳分泌の遅れ
5.母親、家族の育児技術の習得の遅れ
6.母親の育児不安
7.児の乳頭混乱
8.児の不安の増大(よく泣く、呼吸が安定しないなどの症状が出る)
母子分離への看護
アセスメントの視点
1.母子分離をおこしている原因
2.母子分離の期間
3.母児の身体的状態
4.母親の心理状態、言動
5.母親の乳房の状態、乳汁分泌の程度
母子分離への看護の実際
1.分娩の労い、児の誕生の喜びの共有
母子分離がおこる場合、母児のどちらかに何らかの異常がおきている場合が多いです。
そうすると母親は不安、寂しさ、分娩への否定感、無力感を抱きがちです。
そのため、まずは分娩を無事終えたことを労い、赤ちゃんの誕生をともに喜ぶことが看護の第一歩です。
本来なら赤ちゃんの顔を見ながら、赤ちゃんの温もりを感じながら分娩の喜びを感じるときです。
それが叶わない産婦への看護は、より丁寧に長くおこなわれなければいけません。
児の写真を撮って見せるなど、できる配慮を十分おこないます。
2.十分な説明と誠実な対応
赤ちゃんが離れている場合、赤ちゃんが今、どういう状況なのか不安に思います。
どんな治療を受け、どんな世話を受けているのか知りたいと思うのが当然です。
現在の児の状況を細かく、かつ丁寧に説明し、誠意をもって対応することが大切です。
3.なるべく早く母子の面会を果たす
なるべく早く母子の面会を果たすことが、母親の不安や寂しさを和らげる唯一の方法です。
ベビー室への入室が叶わない場合は窓際ごし、入室が可能なら保育器越し、一番よいのは抱っこができることです。
時間の制限はできる限りおこなわず、満足できるまでゆっくり面会時間を取ってあげることが大切です。
母子のどちらかが搬送になった場合は、同じ病院への転院や赤ちゃんの面会のための外出など配慮をおこないます。
4.乳房のケア
母子分離がある場合、乳頭への刺激が少なくなり、母乳分泌が遅れる傾向があります。
できるだけ早く自己乳頭マッサージを開始し、乳汁が取れるなら1ccでも取って赤ちゃんに与えるようにします。
搾乳は、赤ちゃんのために何かできる喜びを感じることができるので、有効なケアです。
5.カンガルーケア
赤ちゃんが保育器から出ることが可能なら、カンガルーケアをおこなうことで愛着形成を促すことができます。
肌と肌が触れ合うことで赤ちゃんを愛しく思え、赤ちゃん自身も呼吸が落ち着いていることが多いです。
赤ちゃんの顔色、SPO2モニターの管理は十分におこなうことが条件です。
6.面会、スキンシップは何度でもおこなう
母親と赤ちゃんの状況が落ち着いたら、面会やスキンシップはできる限り回数を多くおこないます。
保育器に入った状態でも医師のOKがでれば、おむつ交換や体ふき、タッチングなど可能な限りスキンシップをおこないます。
面会時は労いの言葉や母子の愛着を促すような言葉かけをおこなうようにします。
7.母子同室が開始されたときは一から支援する
保育器を卒業し、母子同室がスタートになったら、嬉しさ半分戸惑いが大きいのも事実です。
一から心のケア、育児技術の支援をおこないます。
可能なら退院を伸ばして、十分な愛着形成や育児技術が習得できてから退院できるようにします。
8.退院後のフォロー
退院後も続けてフォローがいる場合は家庭、病院、保健所など連携が取れるようにしておきます。
母親が孤立しないように支援することが大切です。