整形外科の疾患の中でもメジャーな疾患の1つが、変形性膝関節症です。
名前の通り、膝の関節が変形する病気です。看護師の業務は、1つの看護技術に対する知識や技術を求められますが、それ以前に病気を理解した上でそれに対するケアを行うことが大切です。
変形性膝関節症の患者に対する看護について理解を深めて頂けるようにお話ししていこうと思います。
変形性膝関節症とは?
変形性関節症の中でも一番多いのが、この変形性膝関節症です。その理由は、日本の生活様式との関係があり、畳の上に座る習慣が影響していると考えられています。日本人の中でも、中年以降の肥満した女性が発症する確率が高いのが特徴です。
変形性膝関節症は名前の通り、膝の関節が変形します。症状としては、やはり疼痛、そして膝の関節が腫脹します。また、膝を伸ばしきることが出来ないので最大伸転位になることが難しい方もいらっしゃいます。
変形性膝関節症患者に行う看護
変形性膝関節症の病気について理解ができたかと思いますので次は、看護についてお話していこうと思います。
先ほど述べましたように変形性膝関節症は、中年以降の肥満の女性が多いです。
ですので、まずは、体重を減量するようにしていきます。体重減量を指導する際には、食事と運動の両方を行うように説明してください。
そして、変形性膝関節症は痛みや腫脹を伴います。ですが、中年以降の女性は我慢強いため、痛みの訴えない方もたくさんいらっしゃいます。ですので、声かけを頻回に行うか、苦痛表情や仕草で痛みの有無を観察してください。また、痛みや腫脹が強い場合には、鎮痛剤の使用だけではなく、膝関節痛のクーリングをしてください。
ステロイドやヒアルロン酸の関節内注射に関しては、医師が行います。ですので、看護師は医師が処置をしやすいように準備を行います。
-
・イソジン
・アルコール綿花
・薬液入りの注射
・24Gもしくは24Gの注射針
・カットバン
以上を準備しておきます。
まずは、アルコール綿で消毒した後に、イソジン消毒しそして関節注射を行いますのおで、順番に手渡してください。また、注射後に異常がないか患者さんに確認し経過も観察して異常があればすぐに医師に報告してください。
変形性膝関節症の患者さんの場合、何とか日常性活動を自分で出来る方がほとんどです。ですが、痛みによっては荷重をかけることが辛いですので、必要な場合は手伝ってください。
特に、車椅子を使用したことがない方が多いです。車椅子を使用する際には、ブレーキやフットレストの上げ下げを忘れて移乗することで転倒リスクが高まります。
転倒することにより、骨折してしまっては、元も子もないありません。車椅子を使用する際には、車椅子操作方法の説明をするか、看護師の見守りもしくは介助で移乗するようにしてください。
最後に、人工膝関節全置換術を行った患者さんに対しての看護です。
手術後は、状態が変化しやすく急変リスクが高いので以下の点に注意して観察してください。
-
・体温・血圧・脈拍・呼吸・酸素濃度などのバイタルサイン
・麻酔の覚醒状態
・輸液残量と、その後の輸液量を確認し点滴速度を調整する
・出血の有無
・創部痛の有無
・ドレーンの状態(排液量・においなど確認)
その他、全身状態に異常があれば医師に報告してください。特に創部の腫脹、疼痛、発熱、熱感がある場合は感染兆候なので注意が必要です。
人工膝関節全置換術を行う方の中には、輸血を行う方がいらっしゃいます。輸血と聞けば、他人からの血液を輸血すると思われるかたもいらっしゃいますが、人工膝関節全置換術の場合、自己血輸血といって自分の血液を手術前にあらかじめ摂取し、そして手術中にその血液を輸血する場合があります。
他人の血液を輸血するより自分の血液を輸血した方が副作用のリスクが低くなるからです。骨折や病気の場合、あらかじめ手術を想定することが困難ですが、人工膝関節症による人工膝関節全置換術は予定を立てて手術日を決めるので、手術前に自己血を摂取しておくことができます。
手術後は、深部静脈血栓症の予防として弾性ストッキンングを着用してもらいます。締め付けが強く、着用するのを嫌がる方もいらっしゃいますが、必要性を説明し着用してもらってください。
術後数日以内にドレーンを抜去します。抜去後にCPMといった持続的他動運動を行う機会を使用してリハビリを行います。
これは、医師の指示で時間や角度、1日に行う回数を設定するので医師の指示のもとセットして行ってください。多くの病院では翌日にはリハビリ、歩行訓練が開始されます。
患者さん自身、肉体的にも精神的にも負担がかかりますので、温かみのあるケアを行うように心がけてください。