中心静脈栄養法2

中心静脈栄養法の目的

中心静脈栄養法は、消化管の消化吸収障害があり、口から栄養を補給できない場合に、チューブを心臓に近い太い静脈(中心静脈)に挿入し、チューブから糖分や電解質、水分、栄養分を補い、生命の維持や健康を保つためにおこないます。
適応は、2週間以上、腸が使えない(腸からの栄養吸収が見込めない)、経腸栄養の苦痛が強い、抹消静脈栄養や経腸栄養法では栄養分が不足する、抹消静脈栄養の経路が確保できない、患者の希望などですが、基本的には、腸からの栄養吸収方法を優先させる、2週間以内の場合は抹消血管栄養法が適応されます。

中心静脈栄養法のメリット

1.消化器官への負担がなく必要な電解質や栄養、水分が摂ることができる。
2.経鼻栄養法や胃ろう栄養法などと比べ、誤嚥や嘔吐、下痢などのリスクがない。
3.緊急時にただちに必要な栄養素や水分、電解質、薬剤を補投与できる。

中心静脈栄養法のデメリット

1.血管を通して栄養分などを補給するので、感染症になりやすい。
2.血管を介して処置をおこなうので、血栓を形成しやすい。
3.胃ろうと比べ、チューブの長さが長いので抜去してしまう(もしくは自己抜去してしまう)可能性がある。
4.長期間、消化管を使用しないことで、消化管の機能が低下しやすい。
5.管理が難しい。
6.行動が制限されてしまう。

中心静脈栄養の実際

中心静脈栄養法のカテーテル留置

中心静脈栄養法のカテーテルは用途(一時的or長期的など)に応じて、さまざまな種類があります。通常は、鎖骨下静脈や内頚静脈から挿入するタイプが多いですが、穿刺の際の合併症を予防するために、最近では、抹消血管挿入式中心静脈カテーテルもあります。
中心静脈の穿刺は、熟練した医師によっておこなわれますが、穿刺の際には、感染や間違って肺に穿刺してしまう、動脈を傷つける、血栓などの合併症のリスクがあります。穿刺後は確実に穿刺できているかを胸部X線で確認する必要があります。

中心静脈栄養の内容と量

中心静脈栄養の内容は、必要十分量の水分、電解質、栄養を補わないと栄養不良や脱水をおこしやすいです。水分量は、少なくても900ml/日、カロリーは寝たきりの場合で最低1000kcal/日必要です。栄養剤の内容は、ブドウ糖が中心で、アミノ酸、脂肪、電解質、ビタミン、微量元素などを含んでいます。術後で、排液が多い場合や発熱で発汗が多い場合には、患者に合わせて水分量や栄養量を調整します。

中心静脈栄養で起こりやすい合併症

1.感染、敗血症
2.高血糖
3.低血糖
4.電解質異常
5.ビタミン欠乏
6.肝機能異常
7.長期絶食による胆汁うっ滞、脂肪肝

中心静脈栄養の輸液バックの交換方法

1.輸液バックの準備
輸液バックの下側を押して、上下の隔たりを開通させ、輸液と薬剤を混注します。注射器で混注する場合は、清 潔手技に注意して混注する。
2.輸液バックを交換する
交換の際には、クレンメを閉じ、さらにポンプのスイッチをoffにしてから交換する。交換時には、アルコール綿 でゴム栓部を消毒してから針を刺します。
3.ポンプの輸液量を調節して、詰まりやカテーテルの曲がりがないかを確認する。

中心静脈栄養法の注意点

1.チューブの清潔に十分注意する。
中心静脈栄養は感染症、敗血症を起こしやすいので、チューブの挿入部のテープ(フィルム)は最低1週間に1回  は交換が必要です。入浴や発汗でテープ(フィルム)が汚れたり、水が挿入した場合はその都度交換と消毒が必  要です。チューブ挿入部に発赤や腫れ、化膿などが現れた場合は医師に報告します。

2.輸液バック、輸液ルートの交換時の手洗い、清潔手技に注意する。輸液セットの先端には触れないように注意  します。

3.室内の掃除は輸液投与30分以上前に済ませ、喚起も十分におこなっておきます。

4.チューブの固定時の注意
チューブに屈曲がないように固定する、固定テープを剥がすときはチューブを引っ張らないようにする、接   続部で皮膚が傷つかないように、接続部をガーゼでくるんでチューブを固定する、テープの固定テープは、接  続部を挟んで、前後を固定する。固定テープは前回とは違う場所を選択し、皮膚を保護する。

5.入浴時の注意
チューブ挿入部は濡らさないようにする、挿入部に防水保護フィルムを貼る、入浴後、濡れた場合はテープや  フィルムの交換、消毒をおこなう。

6.異常がある場合の注意点
チューブの接続部から薬液が漏れる、チューブに血液が逆流してくる、チューブ挿入部の皮膚や周囲に痛みや  痒み、発赤などがある、発熱してくる、チューブが抜けてきた場合などはただちに医師に報告する。
 
6.体重、尿糖、尿量血糖、血液検査などで栄養状態や水分出納、電解質異常、肝機能などの状態をチェックする。

中心静脈栄養法