つわりの定義
つわりとは妊娠初期におこる軽度の吐き気や嘔吐などの消化器症状を主とした不快症状のことをいいます。
繰り返し嘔吐し経口摂取ができなくなり、全身状態も悪化、日常生活に支障をきたす場合は悪阻とよばれ分類されています。
つわりは早い人で妊娠4週頃より感じはじめ、9週前後がピークとなり12週~16週頃には、落ち着いてくることがほとんどです。
軽度のつわりは全妊婦の80%~90%は感じているといわれており、そのうち重症悪阻になるのは1%~2%程度です。
つわりの原因
つわりの原因ははっきりとはわかっていませんが諸説あります。
Hcgの分泌
ひとつはHcg(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の分泌によるものです。
Hcgは妊娠を持続させる黄体ホルモンを刺激して分泌を継続させる重要な働きをしていますが、同時に嘔吐中枢も刺激するのではないかといわれています。
Hcgは妊娠が成立するととともに分泌が上昇しますが9週~12週頃にピークを迎えます。
このピークとつわりのピークが重なることで原因ではないかと言われています。
女性ホルモンのバランスの変化など
他にも妊娠による女性ホルモンのバランスの変化や胎児を異物と認識し免疫機能が働いているのではないかという説、身体面、心理面の急な変化で自律神経が乱れているのではないかという説など、色々原因と考えられているものがあります。
つわりの症状
一番多いものは吐き気や嘔吐などの消化器症状と匂いに敏感になる、嗜好の変化などです。
他にも眠い、だるい、唾液が増えるなどや吐きづわりとは反対に、胃の中に食べ物を入れていないと吐き気をもよおす食べづわりもあります。
つわりの症状や程度は個人差が大きいのも特徴の一つです。
つわりの治療
つわりは一過性のものなので特に治療をおこなうことはなく日常生活で対処、経過観察されますが、以下のような場合は悪阻の可能性があり場合によっては入院する必要があります。
- 一日中嘔吐しており水分、食事を摂れない
- 体重が4kg以上減少している
- 尿量が減っている
- ふらふらして日常生活に支障をきたしている
- 尿検査でケトン体が陽性である
つわりが強い妊婦へのケア
アセスメントの視点
- 悪阻の可能性はないか(体重、尿量、ケトン体の有無、見た目など)
- 本人の不快な症状がどの程度か
- 食事や水分はどのように摂っているか、または摂れていないか
- 精神的、身体的ダメージの程度
- 家族の協力や理解の程度
つわりが強い妊婦へのケアの実際
入院が必要な悪阻と判別する
つわりは誰もがおこるものとはいえ、日常生活に影響が出るほど強い場合は入院し治療が必要です。
そのため、悪阻との判別をきちんとアセスメントし、入院が必要と判断した場合は医師に上申し診察、入院を依頼します。
また、入院まではいかなくても水分やビタミンの点滴、漢方で症状が軽快することもあります。
点滴や漢方による治療をおこなうのか、日常生活の指導や精神的フォローのみでよいのかを判断する必要があります。
食事指導


つわりは、吐き気と嘔吐の症状が多いのでつわりがあるときの食事指導はとても大切です。
つわりがある時期は、冷たいものやスープなどが食べやすい場合が多いです。
妊婦の症状に合わせて、食事の摂り方をアドバイスするとよいでしょう。
また、胃の中が空になると吐き気をもよおすことが多いので、小まめに少しずつ食べるのも効果的です。
嘔吐によって、脱水になりやすいため水分の摂取の仕方も伝えます。
炭酸水が飲みやすいならそれでもいいですし、妊婦が飲めるもので水分摂取ができるとよいです。
水分が摂れない場合は、スープや鍋物、水分の多い果物、野菜など食事で摂取することも可能です。
ポイントは、食べられないことや吐くことによる赤ちゃんへの影響はないことを伝えることと、なるべくたくさんのつわり対策の方法を伝えて妊婦が取捨選択できるようにするとよいでしょう。
生活指導
つわりのときは体がだるく疲れやすくなります。
こまめに休憩を取ることをすすめます。
家事や兄弟の育児などは家族に協力を依頼するよう伝えます。
つわりの時期は無理をしないことが一番の対策です。
反対に体調のよいときは仕事や外に気分転換にいくことで気分が紛れる場合もあります。
体調をみながら気分転換をすすめるようにします。
気分転換の方法は妊婦に合わせて伝えます。
仕事、外食、友達や家族との会話、趣味、お風呂など何でもよいでしょう。
吐いた後の歯磨きも忘れないよう伝えます。
口の中に吐物が残っていると、気持ちが悪いだけでなく虫歯の原因にもなるからです。
歯磨き粉が気持ち悪い場合は、マウスウォッシュで口をゆすぐだけでもよいです。
衣服は、ゆったりした着心地のよいものにして、ブラジャーで胃を圧迫しないようにします。
精神的フォロー
辛いつわりの間に心の支えがあるかどうかは大きなポイントです。
ご主人、家族、助産師、医師がそれぞれ理解して辛さを受け止めてあげることが大切です。
家族の理解や協力を促すことは、医療者ができる最も大切なケアの一つです。
家族が理解してくれない場合やつわりに誤解がある場合は、妊婦健診や助産師外来に家族とともに来院するよう促し家族への指導をおこないます。
また医療者自身も精神的なサポートをおこないます。
外来で辛そうにしている妊婦がいれば声をかけ別室で休ませる、健診の順番を早くするなどの配慮、つわりの辛い気持ちを受け止める、励ましなどをおこないます。