スタンダードプリコーションとは

院内における感染予防の考え方は2つあり、実際、感染症を持つ患者への対応策である「ユニバーサルプリコーション」と、感染症の有無に関わらず、全ての感染に対して予防策を講じる「スタンダードプリコーション」という考えかたです。

実際、日常の業務の中で一番、基本となるのは「スタンダードプリコーション」で、人の血液、体液、汗を除く分泌物、排泄物、粘膜、傷のある皮膚全てを感染源と考え、感染予防策を講じることをいいます。

スタンダードプリコーションの目的

患者、医療者ともに感染の危険性を減らすこと

感染予防策の考え方

感染予防を考える上で大切な「感染の要素」は、大きく感染源、感染経路、感染を受ける宿主に分けられます。スタンダードプリコーションでは、感染源は人の全ての血液や体液と考えるため、重要となるのは、感染経路の遮断と感染を受ける宿主の対応といえます。

スタンダードプリコーションの具体例

1.手洗い

未知の感染症の予防の基本が手洗いです。感染経路を絶つ有効な感染予防策で、一患者、一処置ごとに手洗いをすることが大切です。

方法

石けんあるいは、界面性活性剤で10秒~15秒以上洗浄します。石けんは十分に泡立てて、全ての表面をこすり合わせて洗い、洗った後は、石けん成分を十分流水で洗い流し、ペーパータオルで押さえるように拭き乾燥させます。爪先や指と指の間、手首、手の甲などは、洗い残しが多くなる部位なので意識して洗うようにする。
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2.手袋、マスク、ガウン、ゴーグル等の着用

患者の体液に触れる可能性がある場合は、手袋、マスク、必要に応じてガウンやゴーグルなど個人防護具を身につけて感染を予防します。

着用の具体例

手袋:採血、点滴、尿カテーテル、口腔ケアのときなど

マスク:呼吸器感染症状の患者の対応時

手袋、マスク:注射剤のミキシング時など

手袋、エプロン:おむつ交換、胃ろう、腸ろうなどの管理

手袋、マスク、ガウン:汚染リネンの交換時など

手袋、マスク、エプロン:環境整備、ドレーン管理、嘔吐物や排泄物処理のときなど

手袋、マスク、エプロン、ゴーグル:口腔・気管内吸入時のケア時

手袋、マスク、ガウン、キャップ:注射剤、高カロリー輸液、抗がん剤の無菌調整時など

手袋、マスク、ガウン、ゴーグル、キャップ:医療器材の洗浄、消毒時

◎注意点◎

・個人防護具は、自分に合った適切なサイズを選ぶこと。

・正しい着脱方法を実践すること。

・破損がある場合は、すぐに交換すること。

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3.患者の使用したリネンや器材の適切な処理

注射針やメスなど鋭利な器材を取り扱うときは、十分注意する。リキャップは禁止。
リネン類や使用器材の適切な廃棄、消毒、滅菌をおこなうこと。
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4.環境整備

病室や洗面所、トイレ、浴室、処置室、汚染処理室などの清掃や生理整頓をおこなう。患者がベッドサイドで使用する機器やコード類も常に生理整頓と清掃をおこないます。床や壁は汚染環境として考えるので、物は床から20cm以上高い場所に置く、床や壁に触れた手で患者の処置をおこなわないことが大切です。
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5.必要に応じて、患者の隔離

実際に感染症がある場合や、感染防止に協力できない患者(排泄コントロールができな場合など)は、個室を考慮するなどで対応します。

感染予防